我が家の小さな庭に、毎年たくさんの秋植え球根を植え込みます。
まだ寒さの残る早春からじょじょに、スノードロップ、スイセン、ムスカリ、フリチラリア、黒ユリなどの小さな芽が出始めて、しだいに可愛らしい花を咲かせる様子を見つけるたび、春が来た喜びをしみじみと感じます。
桜が散る頃咲き始めるチューリップは花の色彩や模様、形が豊富で、どんな品種を組み合わせて咲かせようかと、 春の庭を想像して秋に植え込む作業はとても楽しいものです。
今年は、黒に近い濃紫の“クイーン・オブ・ナイト”と白色に紫色の覆輪が入る“シャーリー”を合わせてみました。寒さが戻る日もあったせいか、二週間以上咲き続け、“クイーン・オブ・ナイト”はしだいに艶を増し、“シャーリー”はだんだんと全体が紫色に染まり、花色の変化も楽しめました。
これまでいくつかの種類のチューリップを育ててみて、我が家のように小さな雑然とした庭には、花色は濃いめではっきりしているもの、形はシンプルですっきりしている品種が、花壇の中で際立つこと、また色形ともに崩れにくくより長く楽しめると気が付きました。
八重咲きで薄桃色の“アンジェリケ”、花びらのふちが鳥の羽のような“ブラック・パーロット”など、花屋さんで並ぶような品種に憧れて庭に植えたこともあるのですが、複雑な花形は雨や風に当たると形が崩れやすく、淡い色は褪せやすい、なかなか上手に咲かせることができませんでした。
そんな反省点も顧みて、さあ次はどんな花を咲かせようかな、と思いを巡らせるひと時も園芸の楽しみのひとつ。小さな幸せの種をたくさん蒔いて、大きな喜びの花を育てる、そんな庭づくりがしたいと、つねづね感じます。
新緑がみずみずしく暖かな風に誘われて自然と外に出たくなる季節、庭いじりを始めるのにもいい頃ですね。
私も、お客様の庭や我が家の庭、そして旅さきで出会った庭や自然を通して感じたこと、気が付いたことを少しずつお伝えしていこうと思います。(文・小川祐子)